こんにちは。アリントスです。
普段は国内電機メーカーの法人営業をしています。
28歳になり中堅に差し掛かり、仕事の責任が増えるにつれ、気合とノリでは太刀打ちができなくなりました。
そんな頃に脳内宰相ビスマルクさんが言うのです。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのだ。21世紀では使い古された言葉だろうが、お前には必要な言葉であろうが!」と。
ということで、「第一次産業革命期におけるイギリスの企業家」を学び、現代のビジネスマンの我々のためになる知見を得ていきたいと思います。
読み進めている参考文献は引き続きこちらです。
前回記事では産業革命がイギリスで起きた要因の1つである「低価格なエネルギー」は石炭の大量生産であり、それは以下の2点により実現したと書きました。
- ロンドンの急拡大に伴う木材燃料価格の高騰
- ロンドンでの家庭用暖房設備の大幅な改善
今回はいよいよ技術の発明に触れていきたいと思います。
とはいえ、まずは、なぜイギリスで技術の発明の連続(=産業革命)が起きたのかを整理します。
発明は”たまたま”やってこない
早速引用します。
マクロレベルの発明は18世紀イギリスでなされた。なぜなら、イギリスの高賃金はーそれは上昇し続けていたがー労働を資本とエネルギーで代替する技術への需要を誘因していたからである。
世界史のなかの産業革命―資源・人的資本・グローバル経済 p 159
マクロレベルの発明、という単語は後述します。
ここまで見てきた「高賃金経済」という状況で、国際貿易でイギリスが勝つためには、その高い労働力を機械化する技術によって安価に置き換える必要があったのです。
そして、労働費用が高く、エネルギー費用が安価であったため、当時のイギリスの工場主はこう考えるのです。
「この高い労働者を安い石炭で動く機械に置き換えられないだろうか」
いつの時代も製造業のビジネスの根幹は変わらないですね。
原価をいかに下げるか、それに尽きるわけです。
こういった経済的誘因が強くあったことが、産業革命を引き起こすことになります。
なお、当時、「労働者は安く、エネルギーが高い」国の代表的な国としては中国が挙げられています。
そのため、中国での西欧的な産業革命の展開は、西欧に比べて非常に遅れていきます。
発明には2つのレベルがある
冒頭で「マクロレベルの発明」という言葉が出てきました。
本書ではこの単語をこう説明します。
これらの発想は生産要素価格の比率の劇的な変化をもたらしたーこれこそが、マクロレベルの発明の顕著な特徴なのである。
世界史のなかの産業革命―資源・人的資本・グローバル経済 p 159
これらは大気圧蒸気機関のような産業革命を彩る技術を指します。
生産要素価格とは、生産時に必要な要素である「労働」「資本(設備など)」「土地」などの価格のことです。
言い換えると、従来の生産時に必要となっていた原価の要素の比率を劇的に変化させる発明のことをマクロレベルの発明というのです。
例えば、「労働者の賃金:設備投資:土地代=8:1:1」だったとしましょう。
それを、「労働者の賃金:設備投資:土地代=4:3:3」という比率に変化させるということです。
これの何が良いかというと、労働者の賃金が高賃金であった場合、その比率が下がることで、総額が減るということになります。
このようにドラスティックな構造変化をもたらすのがマクロレベルの発明といいます。
逆に言うと、生産要素価格の比率によって発明される技術の方向性が規定されるとも言えますね。
一方で「ミクロレベルの発明」という言葉も本書では使われます。
発明の第2段階は研究と開発である。すなわち、発想を新商品や新しい生産工程に活かしていく汗の部分である。
世界史のなかの産業革命―資源・人的資本・グローバル経済 p 160
こちらは分かりやすいと思います。
マクロレベルのドラスティックに生産方式を変える発想を、具体的な生産工程に落とし込んでいく段階のことですね。
なお、当時のイギリスのミクロレベルの発明には残念な発明後記が残ります。
イギリスの競争優位は、イギリスだけに特別に恩恵を与えた技術の発明に基づいたものであった。イギリスの技術者らが技術を完璧にすることに成功したために、この国の競争的優位が崩壊したというのは、皮肉なことである。
世界史のなかの産業革命―資源・人的資本・グローバル経済 p 169
そうなんです。
マクロレベルの発明ではイギリスだけに春をもたらしたのですが、ミクロレベルの発明を完璧にしたが故に、他国にも適用可能となり、競争優位を失ったのです。
まとめ
産業革命を彩る技術は、高賃金な労働力を安価な石炭に置き換えるという方向性のもとに発明されたました。
そして、生産要素価格の比率を劇的に変えるマクロレベルの発明から実際の現場に落とし込むミクロレベルの発明の段階を踏んで、産業革命の技術は洗練されていきました。
このことから、
- 自社(自分のビジネス)の原価構成を理解しているか?
- その原価(生産要素)構成は自社(自分のビジネス)の独自の要因によって決まっていないか?
- 変えるべきは、その独自要因に根差した生産要素ではないか?
- 抜本的な改革と地道な改善の両輪を回しているか?
というイノベーションを求められがちな現代人に示唆を得られたかなと思います。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
良い日々をお過ごしください。
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