ロンドンの家と燃やした石炭の数を数えろ!|ビジネス教養:産業革命編

産業革命

こんにちは、アリントスです。

こんにちは。アリントスです。

国内電機メーカーの法人営業を新卒以降そつなくこなし、約6年経ちました。
妻にも息子にも恵まれた三十路間近の28歳です。
しかし、仕事の責任が増えるにつれ、気合とノリでは太刀打ちができなくなりました。
そんな頃に脳内宰相ビスマルクさんが言うのです。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのだ。21世紀では使い古された言葉だろうが、お前には必要な言葉であろうが!」と。

ということで、「第一次産業革命期におけるイギリスの企業家」を学び、現代のビジネスマンの我々のためになる知見を得ていきたいと思います。
読み進めている参考文献は引き続きこちらです。

前回記事では産業革命がイギリスで起きた要因の1つである「高賃金経済」は以下の3点により実現したと書きました。

  1. ロンドンでは労働力の需要に対して供給が小さかったこと
  2. 自国の状況に適した活動(プロト工業化)を行ったこと
  3. 責任委譲とインセンティブで農業生産性を上げたこと

今回は、産業革命が起きた要因の2つ目「当時のイギリスはエネルギーの価格が安かった」という点について書いていきたいと思います。
これは当時のイギリスの最大の強みでもあります。
強みの発見、興味深いですよね。

石炭の大量生産がすべて!

第一次産業革命の代名詞といえば「蒸気機関」ですよね。
蒸気機関が発明されたことにより、製造業の機械化が進み、生産性が爆発的に向上したという認識は多くの方がお持ちではないでしょうか。
しかし、1712年にイギリスでニューコメンが初めて蒸気機関を実用化しましたが、それをイギリス以外の他国は知らなかった訳ではないのに、導入に踏み切るのは1850年頃になります。
なぜイギリス以外の国は1世紀近くも躊躇することになったのでしょうか。

答えは、当時のイギリスが、石炭の大量生産ができ、安価に抑え続けることができたから。
それがすべてです。
1700年代では蒸気機関の燃料が他国ではどうしても高価であり、採算が合わなかったのです。

イギリスでの石炭の大量生産を呼び起こす要因は主に以下の2つと本書では言われます。

  1. ロンドンの急拡大に伴う木材燃料価格の高騰
  2. ロンドンでの家庭用暖房設備の大幅な改善

「1.ロンドンの急拡大に伴う木材価格の高騰」から見ていきましょう。
元々15世紀頃は木材は極めて安く手に入ったと言います。
しかし、1580年代に入るまでに、ロンドンの都市化が急激に進み人口が約10倍に急増します。
これは前回記事にて触れた通りです。
そのロンドンで木材燃料を使用していたのですが、需要が高まるにつれ、異変が起きます。
木材ですので、伐採をすると十数年は同じ場所からは生産できなくなります。
そのため、需要が急激に増えたため、伐採場所がどんどんロンドンから遠い地域に離れていきます。
伐採場所が離れるにつれて増えるのは輸送費です。
輸送費が増えるにつれて、木材価格が高騰していくのです。
そして、採掘場所が変わらず安定した価格を保つ石炭が次第に、相対的に安価になっていくのです。
これがエネルギーの供給サイドの変化になります。

次に「2.ロンドンでの家庭用暖房設備の大幅な改善」を見ていきます。
本書の著者R・C・アレンの特徴的な主張だと思います。
先ほどは供給サイドの変化でしたが、こちらは需要サイドの変化になります。
石炭という燃料はこれまで無かった訳ではありませんでした。
ただ、石炭を燃やすと大量の煙と硫黄臭が辺りに立ち込めるため、暖房用としては用いられてこなかったのです。
しかし、高騰する木材燃料ではなく石炭を暖房用に使いたい17世紀のロンドンでは煙突のある煉瓦造りの建屋が発明されていくのです。
この発明のされ方が重要であると著者は言います。

ロンドンは極めて急速に成長し、非常に多数の新たな家屋が狭い地域に建設されつつあった。この大量の建設が、通常の商業的理由で進められていた計画にデザイン上の実験を組み入れる無数の機会を提供した。また、この住宅建設が近接して行われたことが、情報の共有を容易にし、建設業者たちがそれぞれ新しい技術をお互いに自由に使い合うことを許し、石炭を使う家を完成させることを可能にしたのである。

世界史のなかの産業革命―資源・人的資本・グローバル経済 p 106

つまり、他人の失敗を見放題、新しい技術をパクリ放題、むしろ、推奨されていた、ということですね。
これを「集団的発明」と呼ぶそうです。
現代のOSS(オープンソースソフトウェア)のエコノミーのようですよね。

まとめ

まとめると、ロンドンの都市化が急激に成長することにより、遠方の輸送費の嵩む木材価格は高騰し、相対的に石炭が安価となった。
そして、ロンドンは集団的発明により、石炭を燃やすことに対応した家屋が発明された。
これらが噛み合った結果、石炭取引が爆増することになりました。
石炭取引が安定的に拡大し続けたため、大量生産も叶い、安価に押さえ続けられたのです。
このエネルギーが低価格であったことが、イギリスで蒸気機関の機械が積極的に使用される誘因であったのです。

以上のことから学び得たことは、

  • 見捨てられてきた低コストの資源はないか?
  • 個人の利益を優先して、他者の意見を排除していないか?

ということでした。
次回はいよいよ産業革命を彩る技術の発明に触れて行ければと思います。

ここまでお読み頂きありがとうございました。
良い日々をお過ごしください。

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